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ユニコのサービス
ユニコでは2021年2月から2022年3月まで、トルコにて「中小企業振興に係る情報収集・確認調査」を行いました。ユニコが、2009年から2012年にトルコにて実施した「中小企業コンサルタント制度構築プロジェクト」の後継となる調査でした。
本調査では、トルコ中小企業開発機構(KOSGEB)と協力し、KOSGEBの中小企業コンサルタント制度について調査を行いました。KOSGEBが準備している「新たな中小企業コンサルタント制度」の運用に向けて、望ましい制度設計とその運営について整理し、今後のJICAとKOSGEBの協力方法について提言を行うことを目指しました。
また、現行制度の課題を抽出するために、現地企業向けに経営コンサルティングサービスの技術支援を行い、企業側のニーズについても調査を実施しました。同時に技術支援をとおしてトルコ人コンサルタントの能力評価および能力強化を試みました。ニーズ調査の対象企業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けKOSGEBが世界銀行とJICAの支援を受けて2021年中に融資を行った「迅速支援プログラム」の裨益企業である製造業小零細企業およびスタートアップ企業でした。
トルコでもコロナ禍では、ロックダウン等で生活が制限されており、時期によっては日本以上に厳しい状況でした。調査や打合せは主にオンラインで行いました。KOSGEB等とのオンラインでの打合せを円滑に進めるため、トルコ語で説明ができる通訳やプロジェクトアシスタントを配置し、トルコ語に翻訳した資料を配布しました。2021年5月には、KOSGEBにおける新制度構築のヒントとなる情報を提供するため、全国のKOSGEB事務所の職員に向けたオンライン説明会を半日実施し、よろず支援拠点など日本の中小企業支援制度や中小企業診断士の活動の様子等を紹介しました。
トルコでの感染が収まっていた2021年6月から7月にはアンカラに渡航し、現地のコンサルタントや企業から中小企業支援に関する人材やサービスの現状について情報を収集することができました。なおオンライン会議ではいつも強面なトルコの方が、実際に会うと社交的で明るい人だったりと良い意味でオンラインと対面ではギャップがありました。
2021年8月には、6日間のオンライン経営セミナーを行いトルコ全土の小零細企業・スタートアップ企業から延べ150名以上が参加しました。日本人専門家が講師として遠隔で講義や質疑応答を行い、KOSGEB職員が当日の進行を実施しました。セミナーは「Sustain」「Grow」「Innovate」の3つのテーマごとに分けて2日間ずつ実施し、企業が興味のあるテーマに自由に参加できる形式としました。テーマにより、カイゼン・BCP(事業継続計画)・海外市場開拓・デジタルマーケティング・新規事業開発・財務管理といった内容を取り扱いました。また参加企業向けにアンケート調査を行い、経営状況について情報収集を行いました。
同セミナーの準備段階では、セミナー向けのチラシや参加登録用の専用ウェブサイトを作成し活用しました。当日は、参加者が理解しやすいように日本語・トルコ語の同時通訳を配置し、講義用の資料も全てトルコ語に翻訳の上、配布しました。通信状況が一時不安定になる等トラブルもありましたが、参加者アンケートによると概ね高い満足度でした。
セミナーには、様々な分野の企業が参加しました。トルコにおける中小企業を分野別にみると少数であるはずの「コンピューター・電子機器等」、「機械装置」、「R&D」といった分野の企業が多く参加したことは意外でした。
2021年11月には、セミナーでのアンケートに回答した企業から選出した27社向けに個別の経営相談を行いました。日本人専門家が企業を直接訪問して、課題の抽出と助言を行う予定でしたが、トルコにおける感染拡大の影響を受けて、オンラインで実施しました。
オンラインでは実際の工場や製品の様子を詳しく見ることが難しいといった点や時差の都合で企業によっては日本側は夜間の対応となる等、苦労もありましたが参加企業から一定の評価を得ることができました。一方、トルコ人コンサルタントの能力強化という点では、オンラインで参加したコンサルタントはオブザーバーに徹した人も多く、実習の機会として能動的な参加を促すという点では、課題が残りました。
また11月には、経営相談に参加できなかった企業向けに、オンラインワークショップとして集合研修も実施しました。オンラインワークショップでは、最初にトルコ企業の事例について日本人専門家から講義を行った他、参加者が小グループに分かれて事例として提示された企業の経営改善策についてディスカッションした後に、各グループごとに経営改善案を発表するなど参加者間のコミュニケーションを促す工夫を行いました。
これらの経営相談やワークショップでは、共通して「経営に係る課題の特定」、「課題の優先順位の整理」、「改善に向けた対策策定」の各工程を順に行うことで経営改善に係る活動計画の策定を促すという手法で行い、参加企業からは「通常のKOSGEBのサービスとは異なり新鮮である」、「今後の計画作成のためにとても参考になった」といった声がありました。
調査の最後には、これまでの活動で得た情報を基に、今後のJICAとKOSGEBの協力案について機会分野とアプローチを整理した上で提言を行い、調査終了となりました。コロナ禍で計画どおり渡航できなかった点など、当初の計画通り進まなかったこともありましたが、今回の調査がトルコにおける中小企業の経営力強化に少しでも役に立つことを願っています。
コンサルティング第一本部
野口 優太
貢献可能なSDGs目標