プロジェクトリポート

タンザニア国「品質・生産性向上(カイゼン)による製造業企業強化プロジェクト フェーズ2」

夜明け間もない早朝、真夏でも山頂に雪を戴いたキリマンジャロが視界に、現地活動の疲れが癒される瞬間です。タンザニア国でのJICA事業 『品質・生産性向上(カイゼン)による製造業企業強化プロジェクト フェーズ2』の終盤、キリマンジャロ州のモシという町を訪れたときのことです。2017年7月から2022年2月までの期間、タンザニア国の投資産業貿易省とカイゼンサービス・プロバイダー(中小企業振興機構、経営教育大学、民間コンサルタント)が継続的にカイゼン活動を各地域に普及展開し、製造企業の品質・生産性を向上できるように当社が支援しました。

 

朝日に照らされたキリマンジャロ

 

筆者はサービス ・プロバイダーに所属するカイゼントレーナーに対するOJT(On-the-Job Training:実務研修)についてプロジェクト終盤から担当しました。当初の予定では2021年8月からタンザニア現地にて活動予定でしたが、新型コロナの影響により渡航許可が下りないためリモートでの対応でした。旧日本海軍連合艦隊司令長官 /山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かず」という言葉のように「現地でやってみせ、説明して、やらせてみて、確認する」ことがOJTの基本です。しかしながら、オンラインによるOJTは情報量が少ない上に時差の関係で軌道修正のタイミングや頻度も限られるため、「後戻り(やり直し)」が頻発することが容易に予想されました。少しでもこの「後戻り」を回避するために現地カイゼントレーナー向けの支援ツールの制作に取り組みました。カイゼン活動の各ステップにおいて必要となる情報やデータを採取する方法、分析する手段等を標準化して埋め込んだツールをカイゼントレーナーに事前に提供して工場訪問時に活用してもらい、彼らの活動結果をツール上でフィードバックしてもらうことで「後戻り」ロスの軽減を図りました。

 

その後2021年11月末に渡航許可が下り、現地ダルエスサラームでのOJTを開始。オンラインとは比較にならないほど効率的に進めることができ、三現主義「現場に行き、現物を見て、現実を知る」の大切さを再認識すると共に、現地にてカイゼントレーナーと一緒にプロジェクトを進められることのありがたさを痛感しました。帰国後はオンラインOJTに戻りますが、渡航時に現場状況の詳細を理解できたことやカイゼントレーナーとのコミュニケーション・ベースができたことで、渡航前よりも格段にやり易くなりました。

 

ダルエスサラーム郊外の工場へ(車中からの風景)

 

OJTの現場はカシューナッツの加工工場、バニラエキスの抽出工場、Tシャツの縫製工場など多岐にわたります。各々の現場でカイゼントレーナーが工場従業員と共に日本式のカイゼン活動を進めるのは容易なことではありません。日本とは仕事に向き合う価値観も文化も異なります。予定通りの成果を得られたケースもあれば、そうではないケースもありましたが、現地に合ったやり方で決して諦めることなく一歩一歩プロセスを進めることにカイゼンの真意があり、道が開けることを伝えました。

 

キリマンジャロ・アベニュー

 

今回のOJTを通じて5Sなどの基本的なカイゼン手法に加えてボトルネック分析等を含む高度な手法に関しても、タンザニア各地域のカイゼントレーナーが理解を深めてスキルアップを図れたことは、トレーナーの自信や意欲向上につながりました。今後、彼らが各地域におけるカイゼン活動を牽引するリーダーの役割を果たすと共に継続的にカイゼン活動を普及展開していく原動力となることを期待したいです。

 

コンサルティング第一本部
岩間 日出夫

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