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カメルーンという国をご存知でしょうか。2002年のサッカーW杯で来日したカメルーン代表チームやJリーグで活躍したサッカー選手などを思い出す人が多いかもしれません。カメルーンは約250の部族がおり、仏領カメルーンと英領カメルーン南部が合併してできた国です。日本の約1.3倍の面積があり、約2,720万人 の人口を有しています。カメルーンは中部アフリカ経済通貨共同体(CEMAC)[1]の加盟国であり、CEMAC全体のGDPの約4割を占め、中部アフリカ地域における経済の中心的な役割を担っています。
JICAはカメルーンにてインフラ整備や農業、自然環境保全に係る支援の他に中小企業振興を支援しています。2007年から2009年にかけて「カメルーン中小企業振興マスタープラン作成計画」を行い、 2010年から2013年に「中小企業振興政策支援アドバイザー」を派遣した後、2015年から中小企業にて「品質・生産性向上(カイゼン) [2] 」の導入を指導する人材育成を支援に関するプロジェクト [3]を継続的に実施しています。
このうち2023年中旬に開始予定である後継案件「包括的BDS [4]提供システムの展開を通じた企業競争力強化プロジェクト」の詳細計画策定調査 [5] (現地調査時期:2022年10月~11月)に参加しました。本調査は主に、(i)2022年11月時点で終了間近であった当時進行中案件の終了時レビュー、(ii)先述の後継案件の事前評価、(iii)後継案件のプロジェクト計画について同国関係者と協議を行い、確認・合意事項をまとめた協議議事録への署名を支援することから構成されていました。
最初に、評価グリッドと呼ばれる一覧表を作成し、現地の企業や関係機関から聴取する項目あるいは文献調査などを通して確認する項目について整理します。これを基に質問票を作成し、現地の企業や関係機関へ配布した後、現地へ向かい1か月の間に4つの州をまわり訪問調査を行いました。 現地で業務を進める上で、想定外で苦労したことが数点ありましたので、簡単にご紹介します。
1.事前にメールで送付した質問票への返信があまり返ってこない
しっかり記入してくれた人も複数いるのですが、事前の回収率は高くありませんでした。そのため面談時に内容を確認することが多くなりました。反省点としては質問票を細かく作りこみすぎたため、回答する側の負担になったのかもしれません。聴取する内容を事前に整理する点では良かったのですが、もう少しシンプルな質問票し面談時に細かく質問する内容は分けることが好ましかったと思っています。
2.聞き取りを全面拒否
約40件訪問したうち1件のみですが、次期案件の詳細な資料がないと一切の質問には答えない!と拒否されたことがありました。当時進行中案件に関わっていない人だったので、一から説明する必要があったのですが、相手が激昂しているパターンを想定していなかったので、調査の目的や次期案件の概要を理解してもらうことに苦労しました。また後日ですが、カイゼンのコンセプトを分かり易く説明するという点で、現地でプロジェクトを実施している専門家の説明方法 (その場にあるコップやスプーンなどのものを使って説明する)はこのような際の対応の一つとして勉強になりました。
上記のような苦労は多少あったものの概ね調査は順調に進み、滞在期間中の最後の週にはパートナー機関の関係者と後継案件の内容について協議が行われました。今回協議した内容や現状調査の内容あるいは他国の類似プロジェクトの内容を基に次期案件あるべき活動内容を見直し、後継案件の枠組み案が修正されました。その後、日本側とカメルーン側の双方[6]から後継案件の枠組み案に関する協議議事録への署名がなされ、無事に調査は完了しました。
本調査にて実施した評価分析では、コロナ禍により当時進行中案件の活動が一部制限されていたことやウクライナ情勢の影響を含む物流の混乱から原材料不足により、生産が止まっている企業があるなど評価が難しい点もありました。一方、当時進行中案件では研修をオンライン化することで遠方の州に住む人に対しても能力強化を継続して実施している点、他の国際機関などと連携した遠方の州や周辺国への技術支援を行っている点、民間のカメルーン人人材の育成・活躍が目覚ましい点など類似プロジェクトにとって参考となる点も多くありました。なお今回は終了時レビューと事前評価を並行して行うことから作業量が多く報告書作成が大変でしたが、案件終了から次期案件開始に至る流れについて理解を深める点では良い経験になりました。
本調査終了後、今回の調査対象となった次期案件は2023年2月に日本側とカメルーン側の双方から討議議事録に署名がなされ、2023年6月から4年間実施される予定となっています[7]。本プロジェクトがカメルーンとその周辺国における中小企業の活性化やそこで働く人々の生活が豊かになるように貢献できることを願っています。
余談ですが、カメルーンの皆さんはサッカー好きな人が多いです。フランス語の通訳さんは若い頃はサッカー選手だったそうで、今でも休日は仲間同士で草サッカーをしているとのことでした。首都ヤウンデでは、赤い土のグラウンドでサッカーをしている子供達をよく見かけました。また現地調査時はカタールW杯の直前だったのですが、レストランやショッピングモールのモニターで多くの人が代表の練習試合を応援していました。その後のカタールW杯でカメルーン代表がブラジル代表を破る活躍を見せたのは周知のとおりです。
コンサルティング第一本部
野口 優太
貢献可能なSDGs目標