プロジェクトリポート

欧州地域西バルカン地域中小企業メンター制度強化

「欧州地域西バルカン地域中小企業メンター制度強化」は、2021年12月から2026年1月まで実施されたJICAの専門家派遣業務です。本案件は、ユニコ社内からのべ6名(途中交代あり)及び外部補強3名(本体業務2名+本邦研修担当1名)のチームで実施しました。加えて、現地常駐の長期専門家1名が2022年6月にセルビアに着任し、案件終了までの期間、相互に連携しながら活動を進めました。

西バルカンの4か国(セルビア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、モンテネグロ、北マケドニア)では、多くの国民は中小企業で働いており、中小企業振興が経済発展のカギを握っています。しかし、支援する側の資金不足や人材不足など課題も多く、十分な中小企業支援体制が整っていません。そこでJICAは、2008年以降、日本の経験をもとに、企業の課題に応じて経営診断や助言を行い、必要に応じて外部の専門支援サービスも仲介するメンターを活用したメンタリングサービス制度をセルビアに導入し、以降徐々に周辺の3か国に拡大させていきました。そして、制度をより安定的に継続できる仕組みづくり及び人材育成を進め、企業の経営力や生産性を高めることを目指し、本案件が実施されました。

 

メンター向けガイドラインの表紙

 

 

1.  メンタリングサービスの提供体制強化

 

仕組みづくりについては、案件開始直後にベースライン調査を行い、各国のメンタリングサービスの課題を確認しました。メンタリングサービスの評価が十分に行われていないことや、メンターの実践機会が少ないことなどが分かり、改善策として毎年のフォローアップ調査の導入や広報の充実、サービス時間上限の見直しを行いました。さらに、既存の『実施マニュアル』を改訂し、研修や各国のメンタリングサービス実施機関への訪問支援を通じて運営力を高めました。案件終了時のエンドライン調査やメンタリングフォーラム[1]も行い、成果の確認と域内の連携強化を進めました。

 

 

 

メンタリングフォーラム後の記念撮影

 

 

2.  メンター及びトレーナーの育成体制構築

 

人材育成面では、ベースライン調査で、各国の実施機関で研修予算が確保されていないことや、メンターの実践的能力の強化策が不足していることなどが分かりました。そこで、2023年に域内共通の資格制度をつくり、セルビアのベテラントレーナー(メンターの指導役)に参加してもらい、研修内容や教材の見直しを行いました。新しい研修も始まり、多くの新しいメンター及びトレーナーが誕生しました。日本に強みのあるコンテンツとして前身案件で導入されたカイゼン[2]の現場指導も強化されました。加えて、各国でメンターの会合や表彰イベントを開催し、学び合いとネットワークづくりを進めました。

 

 

 

カイゼンの研修(北マケドニア)

 

 

3.  域内連携強化と広報活動

 

メンタリングサービスを広く知ってもらうための広報や、国どうしの連携強化にも力を入れました。メンタリングサービスの説明会や各実施機関のウェブサイト、SNSを使った発信で多くの人に情報を届けました。域内連携の枠組みを『規則と基準』という文書にまとめ、関係者全員及び実務者のみが集う会議をそれぞれ重ねて、互いの進捗具合を確認しました。一方、メンタリングサービスの域内共通ブランド構築やオンラインプラットフォーム活用は十分に進まず、課題も残りました。

 

 

団員から一言

 

私たちの活動フィールドとしては生活環境が格段に良く、バラエティに富んだ食事と上質なワインやラキア(果実の蒸留酒)、夜ひとりでも歩ける治安の良さは、現地滞在を快適なものにしてくれました。こうした美しいものが残っていくことを願い、当地の事業者が逞しく根を張って経済を支えていくためにプロジェクトの成果が一助となれば嬉しく思います。(及川)

 

日本式の生産・品質管理手法であるカイゼンに取り組みたいとの要望がある一方、文化や生活習慣の違いから「日本だからできる」との声もありました。まずは小さな目標に取り組み、「自力でやれた」という達成感を味わうことがスタートポイントでした。この経験がポジティブな意識を生み、成功体験を共有することによってカイゼンを継続する土壌が整い、持続的なカイゼン活動の定着につながることを実感しました。(岩間)

 

広域案件では、各対象国の制度普及レベルやパートナー機関(民間・公的)、言語・民族の違い、さらには各国の実施機関間の利害関係などが複雑に絡み合うため、制度の標準化や域内連携の強化の大変さを実感しました。一方、広報活動や実施機関向けの『実施マニュアル』作成については、各国の事情に応じて最適化を図りました。これらの経験を通じて、広域的な取り組みにおいては、共通基盤の整備と各国固有の状況への柔軟な対応の両立が重要であることを改めて認識しました。(野口)

 

旧ユーゴスラビアを構成していた6か国のうちの4か国が本案件の対象国でした。世界中どの国も皆、その国や地域なりの「複雑な事情」を抱えていますが、これら4か国も制度や行政体制などに固有の複雑さがありました。初回渡航時には、こうした地域特有の文脈を踏まえた丁寧な対応の重要性を認識させられました。今後、この4か国がEU加盟を実現した場合、各国の中小企業は厳しい市場環境に直面することが予想されます。そのような中、メンターたちが中小企業の伴走者として機能し、域内の持続的経済発展に寄与してくれることを期待しています。(堤)

 

 

 

実施機関とのミーティング(ボスニア・ヘルツェゴビナ)

 

[1]      各国の実施機関、メンター、支援先企業などが一堂に会し、成果発表やネットワークづくりを行うイベント。

[2]      仕事のやり方を見直し、ムダを減らして効率や品質を高めていく日本発の改善手法


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