プロジェクトリポート

ボスニア・ヘルツェゴビナ国中小企業振興プロジェクト(2008年2月~2008年6月)

ボスニア・ヘルツェゴビナ(以下BiH)と言えば、1984年のサラエボ冬季オリンピックと1992年4月から約3年半続いた国内紛争・サラエボ空爆のイメージが先ず浮かびます。

国内紛争での犠牲者は死者20万人、難民・避難民は200万人と言われています。その紛争終結から13年が経過し、治安は一応安定し、EU統合を国の大きな政治目標に制度整備や改革が進められています。

人口は静岡県の人口程度の約384万人とされていますが、国勢調査は91年を最後に以降行なわれてはいません。

その国勢調査によると、国民は主要3民族から構成され、モスリム系(イスラム教徒)44%、セルビア系(セルビア正教徒)33%、クロアチア系(カトリック教徒)17%です。2007年現在、一人当たりGDPは3,412ドル、経済成長率は7.7%、物価上昇率は4.9%ですが、失業率は28%と依然高水準であり、貧困削減と失業率低下が同国の最大の課題です。

一方、政治体制は、紛争終結を急いだ関係者が大幅な妥協を図った結果、BiHは主としてモスリム系とクロアチア系住民から成るボスニア・ヘルツェゴビナ連邦(FDと略称)とセルビア系が大半なスルプスカ(セルビア人)共和国(RSと略称)との高度に分権化された2自治国から成り、中央政府機構は、固有の権限が少なく、2自治政府にいわば乗っかる不安定な体制になっています。

このようなBiHに対し、JICAは2008年2月「BiH中小企業振興プロジェクト短期専門家派遣」プロジェクトを実施しました。BiHでも、貧困削減や失業率低下により中小企業の果たす役割の重要性が認識されつつあり、国全体として統一的な中小企業支援施策の実施が緊急の課題となっており、そのための支援要請が日本にあったからです。

現状、同国では実質的な中小企業支援は国ではなく自治政府が行っており、更に、歴史的な経緯もあって、自治国内の市町村やドナー等の支援機関もバラバラに活動しています。そのため、経済発展は、隣国のセルビアやクロアチア等と比較しても遅れており、EU統合を円滑に進めるには、国と自治政府、その他の支援機関が緊密に連携を取り合って統一的・効果的な中小企業支援を行う必要に迫られています。私は上記短期専門家として約3か月間BiHに滞在し、JICAの指示に基づき国都のサラエボのほか、FD及びRSの首都、モスタルとバニャルカの計3都市を3回ずつ訪れました。1回目は主に中小企業政策に関連する省庁や機関、中小企業への訪問に努め、2回目は収集した情報の補足調査や纏め、日本の政策・経験に係る勉強会の開催を、最後は、調査結果の報告と提言ために訪問しました。

深刻な紛争の後遺症でしょうか、人々や行政機関相互の不信感が完全になくなったとは言い切れず、崩れやすいモザイク国家であることは事実ですが、その一方で関係者には強い国家再建への取組み意欲がありました。短期専門家として官民の関係者を頻繁に訪問し、議論を重ね、助言を続けていくうちに、BiHの将来にある明るさも強く感じた3か月でした。

コンサルティング事業本部  居合 禮

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