プロジェクトリポート

新メカニズムの構築に向けたアフリカ地域におけるMRV体制構築事業(2011年7月~2012年3月)

2011年7月より2012年の3月までの8ヶ月間、環境省資金による標題事業に参加しました。本事業は、2012年で期限の切れる京都議定書第一拘束期間(2008年~2012年)以降、我が国が温室効果ガス削減活動にどのように取り組むか、その方針を固めるための情報収集を目的とします。

日本は、先進国の中でも省エネの優等生であり、効率の良いエネルギー利用が行われ、ダダ漏れ状態の他先進国とは一線を画するものと国内では考えられています。このようなことから、産業界から鳩山元首相が国際公約した「2020年までに1990年比で温室効果ガスを25%削減」は無謀だとの声が聞こえます。自助努力だけではこの削減目標を達成できない日本にとってCDMは当に不足分の補完手段として期待の大きいものでしたが、CDMの実態は「審査に時間が掛かる」、「期待通りの削減成果が挙がらない」など課題を多く含むことが分かってきました。CDMとは何かを簡単に述べると、途上国のCO2削減プロジェクトの技術的・資金的支援を、削減義務を負う先進国が手掛け、排出分は先進国の排出量とみなす考え方です。削減量の計算は、NFCCC(地球温暖化対策に取り組む国連内の機関)の認可を受けた検証機関によって事後検証が行われます。CDMの課題は、この第三機関による事後検証に掛かる時間と、手続きの複雑さにありました。日本が提案する新メカニズムでは、CDMの課題とされている第三者による事後検証を簡素化しています。つまり、事後検証では無く、削減計画準備段階から削減活動実施期間中に、PDCA (Plan/Do/Check/Action)の手法で行い、しかも当事国の機関で手掛けるというものです。

本事業の実施には、ユニコを含むアフリカチーム、中南米・中央アジアチーム、南西・東アジアチームの3チームが参加し、世界31ヶ国で調査と普及活動を行いました。当社から現地調査へ参加したのは3名で、山内がタンザニア、ウガンダ、ケニアを担当し、岩瀬が民主コンゴ、エチオピア、エジプト、そして渡辺(博)がガーナ、モロッコ、セネガルを担当しました。

さて、MRV体制構築事業の具体的な活動を紹介します。これには2つの大きな成果目標があり、一つが日本の提唱する新メカニズムの宣伝・情報発信、二つ目が2012年度以降に実施を予定するパイロットプロジェクトの相手国側審査機関発掘です。二つのプロジェクト目標達成のために、7月の予備調査訪問を含め都合4回の訪問を行いました。本件は、相手国からの要請に基づく業務ではないため、各国にカウンターパートが存在しません。そのため、7月の訪問は、各国の環境関連省庁と接触し、案件への協力を依頼することを目的としました。この折、各国とも一応の興味を示したものの、地球温暖化案件については欧州勢の方針が浸透しているようで、後発の日本への対応は、全般的に素っ気ないものでした。前向きな対応を示したところでも、単に日本に対する新たな援助プログラム実施に期待してのことであることが透けて見えました。しかし、訪問回数が重なるごとに各国の反応は多少前向きなものへと変化してきました。その背景には、CDMに対する見直しの機運と、後進国を温室効果ガス削減活動に取り込もうとする世界的な潮流がありました。その潮流のひとつにNAMA(Nationally Appropriate Mitigation Action: 温室化効果ガス削減に効果的な国家開発計画*)の開発があります。NAMAについては、奇しくもNFCCCのサイトにNAMAのマッチング・ポータル(先進国の参加を求める後進国と支援を表明する先進国とを結びつけるネット上の交流ゲート)の開設が決定したばかりでしたので、新メカニズムとNAMAをドッキングさせたワークショップを実施することで一層の関心を引き付けようという方針をチーム内で固めました。なぜなら、NAMAは先進国が温室効果ガス削減の名目の下に、途上国の開発計画に援助を行うプログラムであり、その際に削減されるCO2を(新メカニズムの下では)自国機関の力で認証でき、場合によっては削減分を排出権取引市場で販売が可能になるという、途上国にとっては一石二鳥どころか、三鳥のうま味に繋がるからです。モデルケースとして取り上げるNAMAプロジェクトも各国の事情を反映したものでなければ、興味を引き付けませんので国ごとにテーマを変更してワークショップを実施しました。因みにケニア・ウガンダ・タンザニアでは、燃料転換(ビール工場のボイラー燃料を重油から天然ガスに変更することでCO2排出を削減する)を説明用のケースとして採用し、参加者が実際に削減量を計算するためのケーススタディのテーマには都市ごみの埋め立て事業を取り上げました。主催者である、調査チームが出席者に交通費を支払ったこともあり、終了後の評価は実に好評であったことを報告します。

*NAMA:途上国が策定した経済発展計画の中から、「温暖化効果ガス削減に効果的なプログラムがあれば、優先的に開発援助をしましょう」というODAプログラム

コンサルティング事業本部  山内 伯文

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