プロジェクトリポート

ネパール国「山岳地域での輸出用花卉球根の高付加価値栽培モデルに係る基礎調査」

ネパール国山岳地域での輸出用花卉球根の高付加価値栽培モデルに係る基礎調査

「とてもじゃないけど、目を開けていられない・・・。」

エベレストの麓の村までの道中のほとんどを、目をつぶったままマヒンドラ社製SUV車の助手席に座っていました。

JICAの中小企業海外展開支援事業の「ネパール国山岳地域での輸出用花卉球根の高付加価値栽培モデルに係る基礎調査」の第1回現地調査のため、5月31日から6月14日の日程で現地入りしました。本調査は、ネパール山岳地域におけるサンダーソニアという花の球根の栽培事業の実現性及び事業を通じた現地の課題解決可能性を調べることを目的としています。事業対象地のネパール東部のソルクンブ郡パタンジェ村までは、首都カトマンズから車で10時間。最初は後部座席に座っていましたが、カーブが多く気分が悪くなってきたため、最初の休憩時に助手席に移動させてもらいました。すると、視界が開けると同時に、車酔いがあっという間に吹き飛ぶほどのスリルの連続がやってきました。

パタンジェ村の風景(緑の布状のものは、サンダーソニア球根用の雹除けネット)

そして到着したパタンジェ村は、標高2,500メートルの山岳地帯に広がるのどかな農村でした。提案企業のお二人が村内19か所に点在する球根の圃場をすべて見て回ったところ、生育状況にかなりのバラツキがあることが分かりました。そこで、本基礎調査の当初の業務計画には含まれていませんでしたが、第2回現地調査時に生産者である女性グループメンバーを集め、栽培技術に関する半日程度の講習会を実施しようということになりました。

しかし、パタンジェ村での調査を終えてカトマンズに戻り、ネパールで農業関連のプロジェクトを実施しているコンサルタントやNPOを訪問した際、異口同音に言われたことは「1回限りの研修で生産者の行動が変わると思うな」ということでした。彼らは研修で教えたことを生産者が確実に実行し成果を出すために、22週間に渡ってみっちり研修を行ったり、現地に複数のスタッフを配置してきめ細かいフォローを行ったり、並々ならぬ努力と苦労をしているのです。とはいえ、時間も予算も限られている私たちが彼らと同じ活動を実施することは困難です。そこで、ささやかな講習会が少しでも効果的になるよう、いくつかのアイデアを試そうと考えています。例えば、女性たちに夫や息子同伴で講習会に参加してもらうこともその一つです。そうすることで、読み書きのできない女性でも家族の助けを借りつつ習ったことの理解を定着させることができます。さらに、女性たちが個人としてではなく家族で栽培に関わることによって、共同体としての連帯感が生まれるという副次的効果も期待できると考えています。

私にとって初めてのネパール、初めての農業案件。驚きと学びの多い現地調査となりました。

女性組合連合の代表へのインタビュー
チベット仏教の五色の祈祷旗(タルチョ)が飾られたパタンジェ村の民家

*本稿は、2019年7月に執筆したものです。

サンダーソニアをいただきました!

本号プロジェクトリポートで紹介したサンダーソニアの花束を支援先企業様より頂きました。サンダーソニアは南アフリカ原産のユリ科の多年性植物です。花言葉は、「祈り・信頼・共感・可憐」。6月から7月にかけて鮮やかな橙色や黄色の釣鐘型の花をつけます。花の形の愛らしさから、生け花、フラワーアレンジメントやブーケなど様々な用途に用いられています。日本では約50年前から栽培されていますが、乾燥した気候を好み高温・過湿を苦手としているため、栽培農家が限られています。支援先企業のある千葉県は、日本一のサンダーソニア生産量を誇ります。頂いた花束は、本年度の株主懇談会に彩を添えたあと、当社受付にてその可憐な姿でお客様を迎えてくれました。

コンサルティング第二本部
堤 香苗

貢献可能なSDGs目標

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