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ユニコラム

人生相談とデザイン思考

 ジェーン・スーという人がいる。この1973年東京生まれの日本人女性の肩書は、作詞家、コラムニスト、そして、ラジオパーソナリティである。彼女がメインパーソナリティーを務めるTBSのラジオ番組「ジェーン・スー 生活は踊る」に、「相談は踊る」というお悩み相談コーナーがある。私はこの放送を聴く度に、相談者の課題を鋭く的確に整理する彼女の手腕にいつも感心させられる。

 例えば、言いたいことをはっきり言わずに態度で示す(洗濯物を取り込んでくれない夫に対して、言葉で依頼するのではなく、夫の前でこれ見よがしに疲れた顔で洗濯物を畳む、など)という悪い癖を直したいという女性からの相談に対して、「この相談にはいろんな要素が入っています」と前置きした上で、「相談者は、断られることのリスクを負わずに相手をコントロールしようとしている」と喝破し、「これをやると周囲の人に疎まれます。即刻やめた方がいいです」とアドバイスした。さらに、「相談者は、断られたら自分の価値が棄損されると思っています。そして、相手は自分の望みをかなえてくれる人ではなかったことが分かるのが怖いのです。つまり、相手と自分を信用していないし、自分に自信がないのです」とも分析していた。

 彼女のラジオ番組スタッフのインタビューを読んだことがあるが、「スーさんは、短い時間で話の本質をつかみ取って、的確に言葉で打ち返す能力が高いでしょう。その能力を生かすのには人生相談がいい」と書かれており、「私と同じことを思っている人がいる」と小躍りしたくなった。

 

 さらに、先日、彼女に関連する書籍のサイン会で、短時間ではあるがご本人と直接話せる機会があったので、彼女の爪の垢でも煎じて飲みたいという想いから、「課題整理のトレーニングを何かやっていらっしゃるのですか」と尋ねてみた。しかし、「特に何もやっていないですよ。場数を踏んでいるからできるのかな(実際、2023年2月現在、相談コーナーの累計放送回数は2,200回を超えている)」との回答であった。彼女のスキルを凡人が身に着けるヒントを何か得られるかと期待したが、そううまくはいかなかった。

 そんな折、会社が「Schoo」というEラーニングツールの導入を検討することになり、社員がお試し視聴できることになった。デジタルリテラシーやビジネス基礎力、リベラルアーツなど、様々なカテゴリーの授業があるなかで、「デザイン思考と不確実性」という授業を視聴してみた。授業の中で、講師が「専門家が成果を出すプロセス」として、「問題発見→抽象的思考→問題解決→具体的行動」というサイクルを紹介していた。そして、このプロセスこそが、デザイナーの働き方なのだという。

 このプロセスを彼女の人生相談になぞらえると、相談を聴いて、それを抽象化することで問題の本質を明らかにし、そして、その問題解決の方法を考え、具体的な行動として提案する(図参照)、ということなのだと合点がいった。私などは、相談を受けたら、つい短絡的にその具体的な解決策をひねり出そうとしてしまいがちだが、彼女はその間に「抽象的思考」というプロセスを挟むことで、相談者の抱える問題の本質に迫っているのである。

 

 彼女のような人は、きっと意識することなくその抽象と具体の間を自由に行き来できるのだろうが、私を含む多くの人は意識的に行っていかなければならないのだろう。ただ、そのヒントがこの「デザイン思考」とやらの中にありそうだということだけは分かり、光明が見えた気持ちになっている今日この頃である。

直筆サイン入り書籍の見開きページ

サイン会で頂いたジェーン・スーさんのサイン

コンサルティング第一本部
堤 香苗

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