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インタビュー| Md. Abul Faruqueさん Mohammad Jafar Ikbalさん「バングラデシュ国 投資促進・産業競争力強化プロジェクト」

ユニコは2017年5月から2022年5月までJICAの「バングラデシュ国 投資促進・産業競争力強化プロジェクト」にて裾野産業振興のチームを担当しました(詳細はプロジェクトリポート2018年版2022年版 もご参照ください)。当時プロジェクトアシスタントとして本プロジェクトを一緒に進めてくれたMd. Abul Faruqueさん、Mohammad Jafar Ikbalさんにお話しを聞きました。

 

Faruqueさんは温厚で誠実な性格で、バングラデシュ産業省など各パートナー機関の協議や調整についてプロジェクトチームの窓口として支えてくれました。Ikbalさんは情熱的かつ献身的な性格で、研修の技術的な部分でプロジェクトの活動を支えてくれたチームメンバーです。

 

Faruqueさん

 

Ikbalさん

 
  • ● 本プロジェクトに参加する以前の経歴を簡単に教えてください。
 

(Faruqueさん)本プロジェクトに参加する前は、別のJICAプロジェクトの現地スタッフとして約2年半秘書をしていました。その前は約7年間、旅行会社で勤務しており日本の学生向けスタディツアーを含む日本語~ベンガル語の通訳やコーディネーターをしていました。

 

(Ikbalさん)大学で機械工学を専攻したこともあり、プラスチック成形の企業で約13年間働いていました。機械の導入・メンテナンス、輸出用製品の生産管理を行っていました。勤務先の企業からプラスチック協会の研修にも派遣されました。2019年からは、同協会での研修を通して本プロジェクトの日本人専門家による研修も受けたこともあります。

 
  • ● 本プロジェクトでの主な活動内容を教えてください。
 

(Faruqueさん)2017年9月から産業省内のオフィスに常駐する現地スタッフとして参加しました。プロジェクトの活動に関してパートナー機関や各業界団体との協議、研修用の機材など物品の調達、ベンガル語の政策文書などの英文への翻訳といった業務を行いました。

 

(Ikbalさん)2021年6月から、日本人専門家による研修の補佐やベンガル語での研修講師を行いました。また2019年時点で在籍していた企業が本プロジェクトでモデル企業となったことでモデルライン[1]の構築にも参加していました。

 
  • ● 本プロジェクトの業務において特にやりがいがあったことは何ですか。
 

(Faruqueさん)本プロジェクトで働き始めた当時、日本人のチームの中で、最初はバングラデシュ人1名という体制でした。ベンガル語での本プロジェクトの窓口として、研修機関や中小企業財団、各業界団体と多くの関係者を巻き込み、多くのバングラデシュ人に研修を提供できたことにはやりがいを感じました。

 

(Ikbalさん)日本人専門家から、安全や品質に係る心構え、プラスチック成形に係る原材料・機械・トラブルシューティングなど体系的な研修を受けることができたので大変ためになりました。これらの知識や経験を、中小企業向け研修やモデル企業への助言をとおして人に教える機会があったため、やりがいを感じると共に知識の定着にも役立ちました。

 

打ち合わせ中の様子(Faruqueさん)

 

中小企業向け研修の様子(Ikbalさん)

 
  • ● 本プロジェクトの業務において特に大変だったことは何ですか。
 

(Faruqueさん)2019年3月に実施したタイでの第三国研修に係る準備を行う上で、産業省や関係機関の参加者のビザ申請を含めた諸手続きを行ったのですが、煩雑な手続きが必要であり苦労しました。またコロナ禍が始まった当初は、関係機関の担当者が感染し、先方と電話で連絡が一時つかなくなるなど大変でした。

 

(Ikbalさん)コロナ禍のため、2020年3月頃から2021年10月頃までは日本人専門家が現地に渡航できない状態が続き、オンライン研修を効率的に進めることが特に大変でした。射出成形機[2]などの機械に関する説明を現場にてできないため、参加者に理解してもらうために特に時間がかかりました。

 
  • ● 日本人のプロジェクトチームと一緒に仕事をする上で、特に良いと感じた点を教えてください。
 

(Faruqueさん)仕事に対して誠実に取り組む姿勢はとても参考になりました。また複数の研修を平行して進めるプロジェクトマネジメントについては、今後の仕事でも役に立つと思います。コロナ禍になってからは、デスクワークが多かったこともありリモートワークに比較的円滑に移行できた点も良かったです。

 

(Ikbalさん)各分野の専門家と一緒に仕事をしたことで多くのことを学びました。仕事に対する姿勢、世界に通用するエンジニアとしての心構え、プラスチック成形や金型技術に係る知識、現場での品質・生産性向上に係る活動など、バングラデシュの企業では滅多に学べないことを多く吸収できました。

 
  • ● 日本人チームと一緒に仕事をする上で、改善してほしいと感じた点を教えてください
 

(Faruqueさん)特にありません。

 

(Ikbalさん)コロナ禍によりオンラインで仕事する際、作業の進捗や次にどのような業務が必要なのかといった点が見えにくいと思うことがありました。また研修やセミナーを行う際は、参加者へのインセンティブを工夫するなどして、より多くの人に参加してもらうとより良いと思います。

 
  • ● 本プロジェクトがバングラデシュの発展と成長にどのように役立ってほしいと思いますか
 

(Faruqueさん)本プロジェクトでは、多くのバングラデシュ人が研修を受けることができ、パートナー機関や各業界団体の研修機関にとって有益であったと考えます。育成された人材が各機関で講師として活躍し、今後さらに多くの産業人材の育成に貢献していくことが好ましいと思います。

 

(Ikbalさん)プラスチック協会に加盟している企業の従業員に対して体系的な研修を提供したことは有意義であったと考えます。また本プロジェクトの終盤で同協会向けにベンガル語版のテキストを作りましたが、今後も活用してほしいです。モデル企業で行ったモデルラインの設置は、企業が品質管理体制を強化し、外資系企業との取引を増やすために効果的と思います。今後、真似をする企業も増えるのではないでしょうか。

 

オフィスの様子(Faruqueさん)

 

中小企業向け研修の様子(Ikbalさん)

 
  • ● 本プロジェクトを通して得た教訓や反省はありますか

 

(Faruqueさん)産業省内の関係者との協議や調整など難しい局面はありましたが、全力を尽くしましたので思い残すことはありません。強いてあげれば、業務上では英語・ベンガル語を使うことが多かったので、もう少し日本語の技能についても向上できたのではと思っています。

 

(Ikbalさん)プラスチック関係では、各工場における不良品の削減などを行う実習は、一部の企業で行ったもののコロナ禍で機会が限られました。このような実習を伴う研修をより広く実施できると、業界全体の品質が上がると思います。またプラスチックのリサイクル、マイクロプラスチックの環境や人体に与える影響などより広い分野についても理解を深める必要があると感じています。

 
  • ● モデルラインの構築について教訓や反省はありますか

 

(Ikbalさん)日本人専門家が工場を頻繁に訪問した時期の方が、モデル企業の人達の反応が良く、現場の改善も早く進んだため、現場での指導効果は大きいと感じました。モデルラインの立ち上げ時期は、モデル企業側の投資が必要なこともあり企業の責任者から協力を得ることが必須でした。特にモデルラインの設置が工場の生産量を大きく減らさないことを納得してもらうことは大変でした。

 

(Ikbalさん)現場で働く従業員にもモデルラインの目的を理解してもらい、チームとして結束してもらうことが必要です。各工程の手順書を整備するだけではなく、実際にやり方を見せながら説明し、理解してもらうまでには根気強く対応する必要がありした。

 
  • ● プライベートな面についてもお話を聞かせて下さい。仕事の後や週末など、余暇にはどんなことをしていますか
 

(Faruqueさん)コーランを読んだり、テレビでニュースやスポーツを見たりします。日本語の勉強もしています。

 

(Ikbalさん)2022年5月に娘が生まれたばかりなので、毎日世話をしています。妻と妻の両親と協力して子育てをしています。

 
  • ● 最近、特にハマっていることや頻繁に行っていることはありますか。
 

(Faruqueさん)家族と買い物やレジャーに出かけることです。また、よくお祈りをしたり、友人や親戚を家に呼んだりもしています。

 

(Ikbalさん)健康のために毎日一時間程度、散歩をしています。時間を見つけて歩くようにしています。最近はやっていませんが、以前はビデオゲームが好きでよく遊んでいました。Far Cryシリーズが特に好きです。

 
  • ● バングラデシュの魅力についてお聞かせください。バングラデシュのどのような部分が好きですか。
 

(Faruqueさん)スポーツでは、クリケットやサッカーが盛んです。特にクリケットは、代表チームがワールドカップに参加しているので、将来ワールドカップをとれるのではと期待しています。

 

(Ikbalさん)バングラデシュの暦では4月14日が新年にあたり、バングラデシュの伝統的な文化を感じることができます。新年には伝統的な服を着て、特別な料理を食べたりします。自然では、バングラデシュは河川が多く雄大な景色がみることができます。季節ごとに美しい風景が見られることも魅力的です。

 

パドマ川(ガンジス川下流の一部)を渡るフェリー

 
  • ● これからバングラデシュを訪れる人におすすめはありますか。
 

(Faruqueさん)パドマ川のリバークルーズはとても好評です。歴史を感じるのであれば、ソーナールガーオン遺跡(中世ベンガル・スルターン朝時代の都市遺跡)、世界遺産であるパハルプール遺跡(8世紀頃の仏教寺院遺跡)がおすすめです。

 

ジャックフルーツ(バナナとパイナップルを足したような味)

 

(Ikbalさん)マンゴーやジャックフルーツ(バングラデシュ・インド原産のフルーツ)など新鮮なフルーツの季節なので夏に訪れることをおすすめします。セント・マーティン島、世界一長いビーチと言われるコックスバザールなど美しいビーチもあります。シュンドルボンには世界遺産であるマングローブの大森林(野生のトラなどがいます)もありおすすめです。

 
インタビュー・訳:コンサルティング第一本部
野口 優太
 

脚注

  1. ^外資系自動二輪車企業との取引を行う体制を作るために有望企業内の一部に設置された生産ラインであり、本プロジェクトで3社に対して立ち上げを支援。
  2. ^プラスチック樹脂素材を熱で溶かし、金型に流し込み、冷やして固めることで様々なプラスチック製品を成形する機械。
  3.  

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